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息子夫婦に用事があって久々に上京した。まあ、用事にかこつけて映画、古本三昧しようとした訳です。往復で6千円弱の高速バスを利用し出発した。やたら女性専用席が多いような気がする。新宿到着後、早速息子の店に行き持ってきた荷物を渡し、夜の再会を約し、目的の川崎アートセンターへ急ぐ。小田急新百合ヶ丘駅で下車。 そこではフレデリック・ワイズマンの特集上映をしていて、その日は「セントラル・パーク」「基礎訓練」「ミサイル」の3本を見た。彼の作品39本あるうちのやっと5本を見たわけですが、彼独特の作法によって撮られた映像は新鮮そのもので、そこにカメラが居るとは感じられないほどの臨場感がある。 特に「セントラル、パーク」はニューヨークのど真ん中にある広大な公園に集まってくる人々のドキュメンタリーで、あっという間に3時間を見せきってしまう。公園展望スケッチばかりではなく、テニスコートクラブハウス建て替え公聴会とか、維持管理の寄付金集めのNPOの会合などの、ディスカッションの場面が面白かった。 「基礎訓練」は彼の初期の作品でかなりコンパクトにまとめられていて、映像編集的にも凝っている。陸軍の新兵に対し行う最初の訓練を撮っているのだが、後のじっくり構えるスタイルの前なので、モンタージュがうまいのです。例えて言えば土本典昭さんの「ドキュメント路上」的な位置に居る作品ですね。あのキューブリックが「フルメタル・ジャケット」撮影の参考にこれを借りてってなかなか返さなかったということです。 「ミサイル」は大統領の命令がないと発射できない核ミサイル発射チームの訓練を追ったドキュメンタリーです。発射すれば核爆弾の報復合戦で世界は終わりと分かっているから、倫理的な問題、命令の合法非合法、核抑止の倫理も需要な勉強なんだが、そこは問題提起だけでそれの答えは各自で考えろと言うだけでした。後はクイズのような発射手順を如何にクリヤーすれば発射できるかと言うメカニズムを綿密に描いている。そこまで撮っていいのかしらと思えるほどの詳細さです。それらを無事クリヤーした女性二人のチームが合格し、係り官に「発射チームへようこそ」と言われ手放しで喜ぶ様子をさりげなく撮っているが、彼女らに全世界の命運がかかるのかと思うとブラックユーモア以上の愕然とした気分になります。これは見ているときでなく後で考えると効いてきます。 ワイズマンさんは後をひきますねえ。まだまだ何本でも見てみたいものです。 その夜は息子たちと飲んで、一人別れて渋谷のホテルでお泊り。夜10時以降のチェックイン開始というのも変だが、コップが無いのには参った。安いからしょうがないか。 翌日は忙しかった。渋谷駅周辺を散策し、立ち食い蕎麦屋風な店で朝飯。東急百貨店七階のジュンク堂で映画芸術ベストテン号を買って、シネマヴェーラで田壮壮の「呉清源 極みの棋譜」、二階下のオウディトリューム渋谷でグループぴじょんの「死者よ来たりて我が退路を絶て」を続けて見る。 シネマヴェーラは上映前完全に真っ暗になることに感激。映画館はこうでなくてはいけない。非常口だとか足元の明かりは不要だ。「死者よ」は映画祭1968のうちのプログラムのひとつ。当時リアルタイムで見て完全に忘れていたので確認のために見たのだが、やはり、構成に無理があって、どうってことはなかった。ラストのスタッフに知った名前がいろいろ出ていて懐かしかった。そういえばメインスタッフのKさんが斜め前で見ていたようだが、声をかけるのは控えました。 古本屋を2、3軒見て下高井戸に向かう。下高井戸シネマで「ゴーストライター」と「監督失格」を見るためだ。 ポランスキーの「ゴーストライター」は去年のキネマ旬報洋画ベストワンということだが、確かに手馴れてうまいものだがベストワンというのはどうだろうか。うまけりゃいいというものでもないんじゃないか。という気がする。昔の「袋小路」「吸血鬼殺し」の凄さに追いつかないと思うけど。評判のいい「戦場のピアニスト」だって決していいというわけではないと思いますがね。「水の中のナイフ」のピリピリとした若者の感性が懐かしい。 「監督失格」は賛否両論あるだろうけど、主人公の彼女に対し、オマージュを捧げる行為そのものと事実の記録という行為の狭間について考えさせられる映画で、作品に作り上げる行為を思い出の為というオブラートで包んでしまってよいものか、少々疑問ですがね。 又渋谷に戻り、ホテルに行く前に大串ヤキトン屋で一杯、のどを潤す。ホテルに行って驚いた。部屋はユニットバス付のビジネス仕様の部屋だが、なんとベットが無い。床に畳らしきものを引きその上にマットとかけ布団があるだけ。「これより土足厳禁」と書いてあるが、誰が布団の上に土足で上がるのか。まあ、とんだホテルに来たものです。ウイスキーのポケビンをラッパ飲みして(コップがないから)就寝いたしました。 さて、おのぼりさんは次の最終日です。予定では園子温の「ヒミズ」と清水宏の「もぐら横丁」を見るつもりでした。「ヒミズ」は新宿バルトで前々日まで朝11時からやっていたのだが、ケイタイの時刻表見ても当日の予定は劇場にお問い合わせ下さいとある。まあ同じくらいだろうと早めに劇場の前に行ってみた。入り口が分からずあっちこっち探して時間を示してある場所に着いたら、9時からもう始まっているではないか。次の回は「もぐら」の上映に間に合わない。がっくりです。他の劇場を検索したら、すべて時間が合わず断念した。しょうがないから神田の古本屋でも歩いてみるかと神保町に向かう。 あちらこちら覗いていると結構時間がつぶれる。しかし「もぐら」の3時までは時間があり過ぎるので、まだ行ったことの無い神保町シアターによった。作品は何でもいいので行ったら増村保造の「最高殊勲夫人」であった。せりふの飛び交う昔懐かしい家族喜劇でした。ここも映写状況は良かったです。 お昼は行列が切れたのを見計らって南海キッチンでカレーライスを賞味。他の皆さんはもっと上のカツカレーとか盛り合わせランチみたいなうまいものを食べてて、カレーだけというのは私だけみたいでした。キャベツのみという一品もあるんですね。 そうこうして、京橋の国立フィルムセンターへ向かうべく急いでいたが、小宮山書店の入り口近いところに映画本が何冊かあって、ちょいと覗いて数冊購入しました。これがつまずきの第一歩でした。神保町の地下鉄の駅についたが乗る線が分からず路線図で確認し、切符を買おうとしたら売ってない。都営と営団、今は東京メトロか、で売り場が違うらしい。もたもたしてやっと切符を買ってホームへ降りたらちょうど電車が発車するところで間に合わず。10分近く待たされやっと乗って三越前で下車。乗り換えなんだが、やたらと通路を歩かされる。乗換駅で10分近く歩くならその辺案内図に書いてもらいたいものです。一駅以上歩いたんじゃないか。おのぼりさんはつらいよ。もうその時点で「もぐら」開始の3時ちょうど。やっと銀座線に乗って京橋に着いたら、3時10分。決断の3時10分とはこのことか。時間に厳しいフィルムセンターだから入れないかも知れないと思い、これまた断念。まあ、何のために東京へ出てきたのか、馬鹿もいいとこです。銀座であきらめた「ヒミズ」の時間を調べたがこれまた帰りのバスに間に合わず。銀座有楽町周辺を歩き回り、丸の内線に飛び乗ったら、なんと新宿とは逆方向に動くではないか。つくづく自分が如何に田舎者か思い知りました。 新宿3丁目で降りてシネマート新宿あたりでなんか見る映画ないかよってみたが時間が合わず残念。もうしょうがないので紀伊国屋で本でも見るかと向かう。もう破れかぶれですな。 救いは紀伊国屋でタッシェンの写真集「ビリーワイルダー全作品」を見つけたことだ。しかも3050円が900円台だという。これは買わねばならないと購入。全作品のスチールや撮影風景などのオンパレードでうれしいのは本編がモノクロなのに、カラーでトニー・カーチスとマリリン・モンロー、ジャック・レモンとモンローのカラー写真が載っていること。クーパーとヘップバーンのカラー写真も貴重。ラストのフィルモグラフィーはオリジナルポスターで紹介してくれるのですから真にグッドと言わざるを得ないです。せめて見たい映画を見逃した変わりにこれくらいの楽しみが無くっちゃねという次第。 西口の「ボルガ」でバン焼きをほうばりながら、カウンターのご常連の馬鹿話を聞き、程ほどでバスに乗りました。東京は遠くなりにけり。とんだおのぼりさん行状記でした。 ![]() < 前のページ次のページ >
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